Nepalese Story  ネパールのお話集 宝石の河 -上-
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Written only in Japanese.
頁:デザインMr.6 1997年10月10日作成
------- Stories translated from Nepalese folk tale books. -------
民話のようなたわごとのような

パ〜ルのお話

制作・翻訳 美珠和文化研究会 BISHUWA Culture Committee
題字画 明石六郎 / E-mail oichni06@ingnet.or.jp

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第8話 宝石の河 -上-
挿絵 岡山慈未

Junelii Saanjha (月影の夕べ)より
1991年3月翻訳 1997年10月掲載


 昔、ある国での話。

 王妃と世継ぎの王子に恵まれた王は偉大な人だったのだが、大臣はいつも王を妬んでいた。そしてそのうち大臣は、王を殺して自分が国を乗っ取ろうと、機会を窺うようになった。
 ある日、たまたま一人で部屋で寝ていた王を、大臣は首を切って殺してしまった。隣の部屋には王妃と王子が寝ていた。何か気味の悪い音がするので隙間から覗いてみると、王が殺されて大臣が剣を片手に部屋を出ようとするところだった。
 王妃と王子は絶望に打ちひしがれたが、なんとか逃げなければならない。夜を幸い、命からがら城から出て、息も絶えだえに逃げに逃げた。生まれつき高貴な身分であったこの人たちは、かわいそうに裸足で逃げ出したため、足の裏がずたずたに裂けてしまった。
 やがて、ずっと遠くまで来ると大きな河が見えた。河幅は広く、深さは竹の背丈の二三十倍はあろうかと思われた。彼らは河岸に立ちすくんで考えあぐねた。河のこちら側にいると、きっと大臣が追跡して来るに違いない。どうしても向こう岸へ渡らねぱならない。しかし向こう岸へ渡る方法はあるのだろうか。彼らは川岸に沿ってどんどんと歩いて行った。ずいぶん遠くまで来て、一人の聖人に出会った。聖人は尋ねた。
「あなた方はどなたかな。どこへ行かれる。このように柔らかい手や足をしていながら、こんな荒れ果てた地までよく歩いて来ることができましたな。見なさい。足が腫れ上がって血が流れているではないか。」
 聖人の優しい言葉を聞いて、王子はその身にふりかかったことを語るのだった。
「王国を手に入れようとした悪い大臣が王様を亡きものにしてしまったのです。それで私たちも殺されるに違いないと思って逃げたのです。大臣は私たちを捕らえることを決してあきらめないでしょう。向こう岸へ渡る方法がありましたら、お願いですから教えてください。」
 聖人は心気高く優しい人だった。彼は一本の杖と一個のランプを彼らに与えて言った。
「ランプの火を消してはいけないよ。火が消えるとあなたたちは水に沈んでしまう。消さないように持って行きなさい。そうすれば向こう岸へ渡れるだろう。」



 聖人の言葉を聞いて、ふたりには河を渡る勇気が涌いてきた。王妃がランブを持ち、王子が杖を持った。そうして恐るおそる河の表面に降り立ち、そして歩き始めた。
 ランプの灯が消えると彼らは河に沈んでしまう。河の真ん中で火が消えたらと考えると恐ろしかったが、やがて河の中程にさしかかった。
 その時、不思議なことに水の表を大きな宝石が流れてくるのが目にとまった。ふたりは驚き、王子は喜んだが、王妃は恐れてこう言った。
「いい子だからその宝石を拾わないで。」
 宝石を拾ったらどうなるか彼らにはわからなかった。聖人もそのことは何も言ってはいなかった。しかし、こうして宝石が手に入るなんて予想もしなかったことだ。王子は母に見えないように、そっとそれを拾ってポケットに入れた。

 向こう岸へ着いて、なんとか命は助かった。しかし、知らない国へ来てしまって、これからどうしたらいいのだろう。食べ物も無く、空腹で目が回った。どこに寝るかということでもたちまち困ってしまった。とうとう王子はポケットから宝石を出して母に見せることにした。宝石を見て王妃は驚き畏れたが、彼らはそれをある商人に売って、何とか食事と宿を得ることができた。

 さて、その宝石はあまりに素晴らしいものだったので、商人はそれをうまく活用することにした。大臣に差し出せば、喜んでそれ以上の褒美をくれるに違いない。そう考えて大臣のところへ出かけて行った。大臣は宝石が気に入り、商人は褒美をどっさりもらった。こんどは大臣が宝石を国王に差し上げようと考えて、王宮へと出かけて行った。宝石を見て国王もまた大層喜んだ。王には、眼に入れても痛くないというひとりの美しい王女があったので、その宝石でイアリングを作ってあげようと考えた。しかし宝石は一つだけで、二つ分はなかった。とにかく王は偽の宝石でもう一つを作って、そのひと組のイヤリングを王女に贈った。こうして王女は、片方は本ものの、もう片方は偽ものの宝石のイアリングをつけることになった。
 ある日、王女はイアリングをつけて庭を散歩していた。庭の大きな木の上にひとつがいのオウムが住んでいた。雌のオウムが、王女を見て小賢しく言った。
「こんな王女でも、ひとつは本物でひとつは偽物のイアリングをしているんだねえ。恥ずかしいこと。」
 オウムの言葉を聞いて王女は、恥ずかしさと悔しさで真っ赤になって王に訴えた。オウムのことを話し、もうイアリングは決してつけないと言い張った。それを聞いた王も顔を真っ赤にして大臣を呼びつけ、宝石をもう一つ見つけてくるように命令を下した。
 こんどは大臣がくだんの商人を呼ぴ寄せて、こう言うのだった。
「おまえは前に立派な宝石を持って来たが、もう一つ同じものを持って来るのだ。」



宝石の河 -下-
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