Nepalese Story  ネパールのお話集 宝石の河 -下-
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Written only in Japanese.
頁:デザインMr.6 1998年1月10日作成
------- Stories translated from Nepalese folk tale books. -------
民話のようなたわごとのような

パ〜ルのお話

制作・翻訳 美珠和文化研究会 BISHUWA Culture Committee
題字画 明石六郎 / E-mail oichni06@ingnet.or.jp

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第8話 宝石の河 -下-
挿絵 明石六郎

Junelii Saanjha (月影の夕べ)より
1991年3月翻訳 1998年1月掲載


 「おまえは前に立派な宝石を持って来たが、もう一つ同じものを持って来るのだ。」
 さて、王にこう命令された商人も困ってしまった。何しろ見知らぬ旅人から一つだけ買ったのだったから。商人はそういう事情を大臣に話してみたが、大臣もその旅人を探し出して連れてくるように命令する他ない。
 「何にせよ、宝石を探さねばならない。」

 あちこち探しても宝石を売った人はなかなか見つからなかった。しかし苦労のかいあって、ある町外れで、商人はやっとあの王子に会うことができた。さっそく商人は王子を大臣のもとへ連れて行き、大臣は王のもとへと連れて行った。
 「さあ旅人よ。おまえはあの宝石をどこから持ってきたのだ。どこからなりと同じものをもうひとつ持ってくるのだ。」
 こんな命令を下されても途方にくれてしまう。王子が何とも答えないので、宝石を探し出すために一ヶ月の猶予が与えられることになった。しかし、一ヶ月の間に手に入れないと厳しい罰がくだる。王子の心は塞ぎ、そうこうするうちにもう半月が経ってしまった。二度と平穏な生活を送ることはできないのだろうか。
 やっとのことで王子はそのことに思い至り、聖人からもらったランプと杖を持って家を出た。もう一度あの河へ行って宝石を探そうというのだ。
 ランプと杖の魔法の力で河の真ん中まで歩いてきた彼は、そこから水源を目指して進んでいった。そうしてついに、ある不思議な場所にたどり着いた。

 そこには一本の大きな鉄の柱があって、ひとつの水道口からは水が、もう一方の口からは血が流れ出ていた。
 王子は勇気を奮い起こして水の流れ出る方から柱の中へと入って行った。
 美しい家があった。
 家の中はとても静かだった。二階へ上がって、全ての部屋を見たがそこには特に何もなかった。そして三階へと進んだ。
 その部屋に入るや否や、息が止まるかと思われた。それは恐ろしい光景だった。
 立派な寝台の上に、ひとりの男が首を傾けた格好で横たわっていた。首が半分切られていたのだ。
 階段を転げ落ちるように王子が逃げ出そうとしたその時、天からの声が響いた。
 「よく見るのだ、王子よ。それはおまえの父親だ。すぐに首をつなぐのだ。そうすれば王は生き返るだろう。」
 王子は心を落ちつけ、死体の側に寄って首をつないだ。
 まるで酔っぱらって寝ていたかのように、その男は起きあがった。確かに父王だった。
 生き返った父にはまだ息子とはわからなかったが、とにかく王子は喜んで、王を家に連れて帰ることにした。外に出ると、以前に流れていたあの大きな河が無くなってしまっていた。この不思議なことを王子はこういう風に理解したのだった。
 あの宝石の河こそ、父王の首から流れ出た血の河だったのだ(注1)
 ずっとこの世にいなかった父を伴って、日の落ちる頃、王子は家に着いた。王妃の喜びはどんなだったろう。夫が生き返るという経験は彼女の生涯最高の賜り物だった。王もこの頃にはじめて妻や子を認めることができて安心し、落ち着いてその夜を過ごした。

 宝石探しの結果はどうなっただろうかと、王宮では気になり始めていた。もう期限まで残り一日となって、王宮から王子のもとへ使いが送られてきた。
 王子の方は途方に暮れていた。あの宝石の河も乾いて消えてしまっていたのだ。
 どうしたらいいんだろう。命までも失ってしまうのだろうか。
 恐ろしさにうろたえながら、それでも王子は知恵を絞った。
 『父の傷口から流れ出た血から宝石の河はできた。それならば息子である自分の血からも宝石を生み出すことができるに違いない。』
 思い切って指を切って器に血を採った。するとその血は見ている間に宝石を生み出したのだった(注2)。それを持って王子は王宮へと急いだ。

 宝石を差し出された王の喜びは限りなかった。一方、あの若い男がどうやってあんな宝石を手に入れることができたのだろうかと、大変な噂になり、人々は根ほり葉ほり尋ねるのだった。とうとう、王子が自分の指を切って、血から宝石を作り出したことを皆が知ることとなった。
 王子は英雄とされ、国王もその事実を知ると最愛の王女と彼を結婚させることにした。この国の領土も彼に継がせようと考えた。
 しかし王子はこの国を継ごうとは考えなかった。それよりも大臣に奪われた自分の国を取り返すために国王に援助を求めた。こうしてこの国の軍隊が王子の国へ向かい、大臣の軍隊と戦った。大臣の軍隊は打ち破られ、王子は領地を取り返した。
 悪い大臣は鼻と耳を切り落とされて、国の外へと追放になった。


    <注>
  1. 古典「マヌ法典」に、死体から血が流れ続けて河となる地獄の例がある。
  2. 血から宝石を生じる例はやはり古典にある。





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